戦に群れる蠅
2006-05-12


いつの世の、どんな戦争でも、高邁な大義の下に莫大なカネが動き、それに群がるおぞましい悪党がいた。かつて、八紘一宇の聖戦の名の下に、中国大陸に攻め込んだ皇軍に従って、公権力には手が下せない汚れ仕事を引き受け、国民の血税を吸った蠅がいた。
 多国籍軍のイラク侵攻は、イスラームのウンマを、アングロ・アメリカン流の民主主義に置換することが大義名分の1つで、民主制度の手ほどきや、女性解放センター作りの指導に当たる人材が、現地に送り込まれた。オクラホマ出身の女性弁護士で、熱心な女権論者であったファーン・ホーランド(Fern Holland)も、その一人。33歳、知的な美人だった。
 2004年3月9日、イラク南西部の聖地カルバラ近郊の、荒れ地に消える小道で、銃弾を浴びて蜂の巣のようになった彼女の遺体が見付かった。傍らには、ヒッラの米軍拠点で「暫定連合司政部」の職員として一緒に働いていた元海兵隊広報担当のザンガス中佐(Robert J. Zangas) と、イラク人通訳サルワ・ウマシ(Salwa Oumashi)の遺体、そして3人が乗っていた車が残されていた。3人を襲った集団は、イラク警察の制服を着た一団と分かったが、捜査はそこで、闇に消えた。
 だが去年秋、米本国の検察官やFBIが、現地で「イラク復興事業」について調べた結果、彼女らが「暫定連合司政部」から32万ドルのも現金を受け取っていたことが分かった。死の直前にも、イラク人120人をヨルダンに送り、民主主義や人権について教育するための費用として、約20万ドルの現金が渡されていたこと、しかし彼女らの死後に、その大半が消えていたことが分かった。
 そればかりか、事件当時の「暫定連合司政部」での、数10億ドルに及ぶ贈収賄事件が発覚、当時の軍政官や「戦場のビジネスマン」を含む4人が逮捕され、今春、相次いで懲役に服した。
 8日付のニューヨーク・タイムスは、追跡を続けてきた彼女たちの死の謎と、この汚職の関連について、J.Glanz記者のバグダッドからの報告を掲載、なお12万5、035ドルが不明と伝えた。(;)

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